低血糖

糖尿病の治療では、『低血糖』にも注意が必要です。 低血糖になると、「異常な空腹感、あくび、だるさ、冷や汗、動悸、ふるえ、吐き気」などの症状が現れてきます。 対処しないと意識を失うこともあり、重症の低血糖は、命に関わることもあります。 低血糖はインスリンの分泌を増やす薬やインスリン製剤を使用しているときに、起こる危険性があります。 これらの薬が効きすぎたり、運動でブドウ糖を消費し過ぎると、血糖値を上げようと「アドレナリン」などが分泌することによって、前記のような症状が現れます。


■低血糖とは?

糖尿病の治療では、基本的に血糖を下げることを目指しますが、血糖値が必要以上に下がってしまう『低血糖』にも注意が必要です。 軽い場合は「冷や汗、脈が速くなる、手が震える、ふらふらする、強い空腹感、生あくび、だるさ、動悸、吐き気」などが現れ、 さらに血糖が下がると脳のブドウ糖が足りなくなり「頭痛、目のかすみ、眠気」などの中枢神経症状が起こり、 重症の低血糖になると「痙攣や立っていられない、意識が朦朧とする、昏睡する、異常行動」などが現れて意識がなくり、命にも関わります。

低血糖や起こると、血糖値を上げるために、アドレナリンなどのホルモンの分泌が増え、その影響で、 血管の収縮や血圧の上昇などが起こりやすくなります。 また、低血糖の状態は「不整脈」に繋がることもわかっています。 これらはいずれも、「脳卒中」「心筋梗塞」などに繋がるリスクとなります。 近年の研究で、血糖値を十分に低い値(ヘモグロビンA1cで6%未満)に厳格に管理しても、脳卒中や心筋梗塞などを抑制する効果はみられず、 下げ過ぎた場合にはむしろこれらの病気による死亡率が上がることが示されています。 また、その背景には、重症の低血糖が関わっていると考えられています。 特に低血糖が起こりやすいのは高齢者です。 高齢者では転倒、骨折による寝たきり、認知症、脳卒中、心筋梗塞などに繋がりやすいため、特に注意が必要です。 そこで、2016年に高齢者(65歳以上)の血糖管理の目標値が、一般成人よりも少し緩めに設定されました。

高齢者の糖尿病


■薬の量やタイミング、食事や運動が影響して起こる

低血糖の多くは、糖尿病の薬が効きすぎることで起こります。 血糖値を下げる薬を使っている人は、食事の時間が遅れたり、食事の量が少なかったり、あるいは運動量が多かったりすると、 血液中のブドウ糖が少なくなりすぎなり、低血糖を起こすのです。 重症の低血糖が起こりやすいのが、インスリン製剤スルホニル尿素薬です。 特に「スルホニル尿素薬」を使っている人は、低血糖を起こしやすいので注意が必要です。 グリニド薬でも起こりますが、効果が短時間で消えるため、頻度は高くありません。 特にインスリン製剤は、使用量を間違えたり、使用するタイミングが少しずれると効き過ぎてしまうことがあります。 また、薬を正しく使っていても、食事や運動が影響して低血糖が起こる場合があります。 例えば、食事を抜いたり、食事の時間が遅れたり、炭水化物の摂取が不足した場合などです。 家事や仕事で、普段よりも多く体を動かしたり、激しい運動をした場合なども注意が必要です。


■薬、食事、運動に気を付けて低血糖を予防する

低血糖を防ぐには、自分が低血糖を起こしやすい薬を使っているかどうかを知ることが大切です。 特にスルホニル尿素薬に分類される薬は複数あるので、医師に確認しましょう。 もちろん、薬は定められたとおりに服用してください。
食事は、毎日できるだけ同じ時刻に同じ量を摂るようにします。 炭水化物の摂取量が少ないと、低血糖が起こりやすいので注意が必要です。 食品の選び方や摂り方は、医師や管理栄養士に相談しましょう。 また、普段より多く体を動かすときは、ビスケットなどの補食を用意して、運動中、あるいは運動後に食べるようにしましょう。


●シックディ

特に低血糖に注意したいのがシックディのときです。 シックディとは、糖尿病の患者さんが感染症や発熱などで体調の悪い日のことです。 シックディには体調の変化や食欲不振、下痢や嘔吐などによって、食事を摂りにくくなるため、重症の低血糖が起こりやすくなります。 シックディの時は、普段とは異なる対応をすることが大切です。 まず、低血糖が起こる可能性のある薬を使っている場合は、食欲不振や下痢、嘔吐などがあっても、絶食はせずに、水分とともに炭水化物を摂りましょう。 食事を摂れない場合は、薬の調整が必要になることがあります。 ただし、対応の仕方は、患者さんによって異なります。医師に連絡して対応するか、事前に対応の仕方を確認しておきましょう。


●「CGM」で血糖値の変化を推定する

睡眠中など、これまでは低血糖が起こっても気付きにくい場合が少なくありませんでした。 しかし、持続グルコース測定装置(CGM)によって、こうした低血糖を発見しやすくなっています。 CGMは、皮下のブドウ糖濃度を測ることで、24時間連続で血糖値の変動を推定できる装置です。 得られたデータは、食事や運動、薬を使うタイミング、シックディの時の対応を判断するなど血糖管理のための大切な指標になります。 医師がインスリン製剤の処方量を調整するときにも役立ちます。


■低血糖が起こったら、我慢せず、すぐに糖分を補給する

低血糖が起こった場合は、すぐブドウ糖や砂糖を摂ります。ブドウ糖なら10g、砂糖なら20g程度が摂る目安です。 α-グルコシダーゼ阻害薬を使っている場合は、砂糖だと分解されるのに時間がかかるため、必ずブドウ糖を摂ります。 ブドウ糖や砂糖を摂取したら、15分ほど様子を見て、効果が見られなければ、もう一度ブドウ糖や砂糖を補給します。 症状が長引いたり、なかなか改善しない場合は、早目に医療機関を受診してください。


●こんな時に起こりやすい

  • ▼薬の量を増やした
  • ▼薬の種類や回数、使用するタイミングを変更した
  • ▼食事の量が少ない
  • ▼食事の時間が遅れる
  • ▼運動量が多すぎる
  • ▼空腹時に強い運動をした
  • ▼鎮痛薬や多量のアルコール飲料を飲んだ

●対処法

▼ふだんからブドウ糖や飴を携帯する
低血糖の対処法は、すぐに血糖値を上げることです。 常にブドウ糖や飴、ジュースなどを携帯しておき、異変を感じたらすぐに食べたり飲んだりします。 症状が治まったら、炭水化物を2単位(160kcal)以上摂ります。 2単位には、おにぎり1個分くらいが相当します。

▼糖尿病手帳などを携帯する
糖尿病手帳や”私は糖尿病です”と書いてあるカードは、医療機関でもらうことができます。 糖尿病手帳には現在の血糖値や治療法などを書き込むことができます。 書き込んだ内容は担当医に見せましょう。