糖尿病腎症

糖尿病腎症は進行すると治療が難しく、大きな苦痛を伴うこともあるため、できるだけ避けたい合併症です。 糖尿病腎症になると、血糖と血圧の管理が必要になります。 血糖と血圧をコントロールし、腎症を悪化させないようにすることが大切です。


■「糖尿病腎症」とは?

腎臓の病気で「人工透析」を受ける患者は年々増加し、現在、国内で新たに人工透析を受け始める人は1年間で3万人を超えています。 その最大の原因が『糖尿病腎症』です。糖尿病腎症も他の合併症と同様に、血液中の糖が増加することで発症します。 しかし、その発症までの期間には大きな個人差があり、血糖と血圧の管理しだいで、 糖尿病になってから5年で発症する人もいれば、20年かけて発症する人もいます。

腎臓は、体の中でたんぱく質の分解物で不要になった老廃物を尿を作って除去する臓器で、背中の方に左右2つあります。 腎臓腫瘍で手術したり尿管結石症で片方の腎臓が機能しなくなっても、残りの腎臓ががんばってもらえれば腎不全になることはありません。 しかし、糖尿病の合併症として腎臓が悪くなってきた場合は、両側の腎臓が同程度に障害されるので2つあるから大丈夫とはいえません。 腎症も初期のうちは症状はありません。かなり進んでくると浮腫が出てきます。 透析を考えるころになると、尿毒症の症状(倦怠感や貧血症状など)が出てきます。 このころから血糖コントロールをよくしても効果はありません。 初期から中期にかけて、検査で腎臓が傷み始めているか確認するには、血液検査ではなく尿の検査が大切です。 尿にたんぱくが見られ、そのたんぱくの一つである尿のアルブミンを測定することにより、早期の腎症を見つけることができます。


■糖尿病が腎症を起こす仕組み

左右の腎臓には、毛細血管が集まった「糸球体」が約100万個づつあります。 血液を濾過し老廃物を取り除くことが、糸球体の役割です。 ところが、糖尿病で血糖の高い状態(高血糖)が長い間続くと、糸球体の血管が1つ1つ傷んで動脈硬化が進み、濾過機能が低下して、腎症を引き起こします。 濾過機能が低下すると、塩分を排出しにくくなり、血圧が上昇しがちです。すると、傷んでいない糸球体にさらに負担がかかります。 この悪循環によって、腎症が進行していくのです。


■糖尿病腎症の進行

糖尿病腎症の経過は次の5つに分けられ、それぞれの段階に応じた治療が行われます。


●腎症前期

何の症状もありません。


●早期腎症期

尿中に「アルブミン」というたんぱくがわずかに出てきます。 しかし、腎臓の機能は正常で、自覚症状はほとんどなく、一般の尿検査では発見できません。 この段階では、生活習慣の改善による血糖や血圧のコントロールなどの治療が行われます。


●顕性腎症期

尿中に常にたんぱく質がでてきます(たんぱく尿)。 進行すると、「脚のむくみ」などの症状が現れることがあり、腎臓の血管が硬くなるため、血圧も高くなります。 顕性腎症期には、生活習慣の改善に加え、降圧薬を服用して血圧をコントロールします。 食事でのたんぱく質の摂取制限も必要になります。


●腎不全期

腎臓の機能が著しく低下して、本来は濾過されるはずの老廃物が体内にたまり「尿毒症」が現れます。 尿毒症になると、「貧血や皮膚のかゆみ」を始めとするさまざまな症状が現れ、命に関わることも少なくありません。 腎不全になると、腎症の進行を止めることは困難です。やがて、「透析期」に入り、人工透析による治療が必要になります。 腎不全になると腎機能の回復は望めませんが、顕性腎症の前期までなら、しっかりとした治療を行うことで腎機能を改善することもできます。


●透析療法期

人工透析による治療を行います。人工透析も5年ほど経つと機能が悪くなり、腎移植に移らねばならなくなります。 腎移植をしても免疫による拒絶反応と闘わねばならず、5年間無事に生着している割合は、半分程度です。


■糖尿病腎症の検査

早く発見するには、微量アルブミン尿検査が重要

糖尿病腎症の検査には「尿検査」「血液検査」「eGFR」があります。 まず、尿検査と血液検査が行われ、尿検査でタンパクが出たら、腎臓に障害のあるサインです。 血液検査では、老廃物の1つで腎臓の働きが低下すると血液中に増える血清クレアチニンを調べます。 この2つの検査は、企業や自治体の健康診断でもしばしば行われていますが、糖尿病がある場合は、たんぱく尿や血清クレアチニンを調べるだけでは不十分です。 糖尿病腎症を早く発見するためには、微量アルブミン尿検査を受ける必要があります。 糖尿病のごく初期には、タンパクの代表であるアルブミンが尿中にごく少量漏れてきます。 これが微量アルブミン尿ですが、通常の尿検査ではわかりません。 糖尿病と診断されている場合は、少なくとも年1回、できれば半年に1回は微量アルブミン尿検査を受けることが必要ですが、 実際には患者さんの30%程度しか検査を受けていません。 糖尿病腎症を早期発見するためには、定期的にタンパク尿や血清クレアチニンを調べるとともに、微量アルブミン尿検査を受けることが大切です。

▼尿検査
正確には1日尿をためて、尿中アルブミン測定及びクレアチニンクレアランス(正確な腎機能評価法)を測定することが望ましいとされています。 早期の腎症を見つけるためには、尿アルブミン測定が重要です。 一般的に試験紙法でたんぱくの有無を調べる方法では、初期の腎症は見つけられません。 たんぱくが試験紙法で陽性になったころには、中期から後期の腎症になっていることを示唆します。 また、尿糖は血糖がよくなれば消失しますが、尿たんぱくは一度出ると、その後血糖値が改善してきても消えません。

▼血液検査
血清クレアチニン、尿素窒素を測定することにより腎臓機能を推測することができますが、 血液検査のこれらの項目が上昇してきた場合は、かなり腎機能が悪化してきていることを意味します。

▼eGFR
最近、腎臓学会が提唱している腎機能評価法です。eGFR用卓上計算機を用いて年齢、性別、身長、 体重、血清クレアチニンを入力することにより、蓄尿しなくても簡易腎機能を測定できます。

糸球体は、一度壊れると元に戻らないといわれているため、治療の目的は、進行を遅らせることになります。 しかし、微量アルブミン尿が出た段階で発見してすぐ治療を受ければ、尿中にアルブミンが漏れなくなることもあります。 糖尿病腎症の症状がよくなる可能性があるということです。