血糖値は薬で急激には下げずに自分でゆっくり下げるB

血糖値を無理なくゆっくり下げる治療こそ世界の潮流で、基準値より少し高めがベスト!


■厳格すぎる血糖値の治療は、逆に寿命を縮める

皆さんは、2012年4月1日から日本のヘモグロビンA1cの測定数値が改訂されたことをご存知でしょうか? 日本では、これまでヘモグロビンA1cは、「JDS値」という測定値を使っていましたが、 今後は世界のほとんどの国で使われている「NGSP値」を使うことになったのです。

さて、今や世界の糖尿病治療は、強い飲み薬やインスリン注射で無理やり血糖値を基準値内に下げる必要はなく、 無理なくゆっくりとコントロールしていくという考え方が潮流になりつつあります。 例えば、英国の権威ある国立最適保健医療研究所(NIE)のガイドラインでは、ヘモグロビンA1cを6.5%〜7.5%の間に コントロールすることが求められています。日本の目標値は、NSGP値でヘモグロビンA1cを6.9(JDS値で6.5)%未満にコントロールし、 最終的には正常値の6.2(JDS値で5.8)%以下を目指しますが、これと比べればかなり緩やかです。 ちなみに、英国でも以前はヘモグロビンA1c7.0%が上限でしたが、世界各国の研究報告によって、血糖値の急激な下げ過ぎは 低血糖を招き、心筋梗塞や脳梗塞などの血管性疾患を合併する危険があるとして、目標値が現行の緩やかなものに改訂されたようです。

そもそも、血糖値の下げ過ぎが危険という報告が世界に提示されたのは、米国最大の研究機関の米国国立衛生研究所が行った 「アコード試験」(2008年発表)でした。この試験は、糖尿病の患者さんが厳格に血糖値を下げることによって、 どれだけ生存率が改善するのかを調べるために行われました。具体的には、米国とカナダの、重度の2型糖尿病の患者さん 1万人を対象に、ヘモグロビンA1cを6.0%未満に厳格にコントロールする群(強化療法群)、ヘモグロビンA1cを7.0〜7.9%に 緩やかにコントロールする群(標準値療法群)に分け、追跡してそれぞれの死亡率を比較したのです。
その結果、強化療法群の死亡率は、標準療法群に比べて 22%も高いというものでした。さらに、低血糖の発症についても、強化療法の方が圧倒的に多いことがわかりました。

つまり、血糖値を厳格にコントロールすると、血糖値が急激に下がって低血糖を起こす危険性が高まり、死亡率が上昇することが わかったのです。なお、強化療法群では、厳しい食事療法やインスリン注射を行っている人が多かったと考えられます。 この試験はもともと、厳しい血糖コントロールによって死亡率は大幅に減少するだろうと予想されたものでした。 ところが、全く反対の結果が出てしまったわけです。そのため、5年間行われる予定だったこの試験は3年半で打ち切られました。



■ヘモグロビンA1cは7.0%程度なら達成しやすい

アコード試験の結果は、世界中の糖尿病治療に携わる医師に衝撃を与えました。 そして、さらなる検証が次々と行われていきました。 そのもっとも重要なものの一つが、2010年1月、科学誌『ランセット』に掲載された、英国カーディフ大学のクレイブ・カリー博士ら による研究報告です。これによると4万8千人の糖尿病患者さんを調査した結果、死亡率が最も低くなるのはヘモグロビンA1cが 7.5%であり、ヘモグロビンA1c6.4%では死亡率が52%上昇したといいます。 こうした糖尿病治療に関する多くの研究結果を受けて、私は日本の血糖コントロールの基準は厳しすぎると考えるようになりました。 そもそも日本では、糖尿病といえば、三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)ばかりが問題視されてきました。 しかし、死亡率とのかかわりでいえば、低血糖による心筋梗塞などの血管性疾患をもっと問題視すべきでしょう。 そこで、ゆるやかな血糖コントロールを目標にするべきです。目標値がゆるやかで、患者さんにとって達成しやすいものであれば、 患者さんの精神的な負担も減り、治療意欲も高まります。
いろいろな考察をした結果、私自身、ヘモグロビンA1cはNGSP値で7.0程度にコンロロールすることが理想ではないかと考えています。 実査に、私の医院では、こうした治療で糖尿病を克服した患者さんが多く、中にはインスリン注射が不要になった人もいます。