「痩せ型糖尿病」には「亜鉛の補給」が効果的

インスリンの原料『亜鉛』が不足すると糖尿病になる人が多く、 痩せ型体型の人で食事療法や運動療法が無効の人は『痩せ型糖尿病』の疑いが大きいと言えます。 痩せ型糖尿病の人がインスリンの原料である亜鉛を補給したら糖尿病が治った、という報告が続々と寄せられています。


■日本人では痩せているのに糖尿病の人(痩せ型糖尿病)が多い

糖尿病といえば、太った人がなる病気というイメージがあります。 確かに、体重が重い人ほど糖尿病にかかりやすいことは、厚生労働省が行っている「糖尿病実態調査」でも明らかです。 ところが、実は日本では、痩せているのに糖尿病になる人が少なくありません。 2007年に糖尿病疾患者2000人を対象とした大規模調査で行われた中間報告では、肥満度を示すBMI値が、 日本人の平均22.7に対して、糖尿病の人の平均値は23.1と、ほとんど差がなかったのです。 また、日本人には、食事療法や運動療法をしても高血糖が改善しない糖尿病の人もいます。 これはなぜでしょうか。 実は、こうした人は、ミネラルの一種である『亜鉛』が不足している疑いが大きいのです。 亜鉛が不足すると、味覚や皮膚の障害、さらに貧血(亜鉛欠乏症)が起こることは知られています。 では亜鉛が糖尿病とどうかかわっているかを説明しましょう。

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンという血糖値を調整するホルモンの量が減ったり、その働きが弱ったりすることで 起こる病気。インスリンを分泌する膵臓には、亜鉛が豊富に含まれています。 インスリンは膵臓にあるランゲルハンス島と呼ばれる部位のβ細胞で作られますが、 亜鉛はβ細胞でインスリンの合成・貯蔵・分泌を促す働きをしていることが知られています。 また、亜鉛はインスリン自体の原料となり、インスリンの働きを長く持続させる役目も果たしているのです。 したがって、亜鉛が不足すれば、膵臓はインスリンを十分に作ることができなくなるばかりか、 インスリンの働き自体も弱くなってしまいます。その結果、血糖値が上昇してしまい、糖尿病になってしまうわけです。 そこで、亜鉛を補給すれば、インスリンの量が増えるのと同時に、その働きも正常に回復して、 高かった血糖値が下がってくるというわけです。



■食事制限は亜鉛不足を招く

私が亜鉛の重要性に気が付いたのは、大学病院で勤務医をしていた時のことです。 高齢者の多い病棟を回診した時に、持続点滴を受けていた高齢の患者さんの多くはベッドのシーツがフケでいっぱいになっている のに気が付きました。なぜフケが多いのだろうと疑問を感じ、大学病院の婦長さんに相談しました。 すると、婦長さんは、「フケが多く出るのは、亜鉛不足によるものでしょう」と即答されました。 そこで点滴に亜鉛を加えたところ、1週間後の回診時には患者さんのフケが見事に消えていたのです。 亜鉛の働きに驚いた私は、亜鉛に興味を持ち、研究を始めました。 その結果、現代の日本人は亜鉛が不足しているため、糖尿病をはじめとするさまざまな病気や体の不調に悩まされていることが わかってきたのです。亜鉛は、私たちの体内で作ることはできないので、不足しないように食品から毎日補給しなければなりません。 ところが、現代の日本人は偏食や無理なダイエットなどで栄養不足に陥り、亜鉛の摂取量が不足しています。

私たちの食生活の中で、亜鉛を含む身近な食品としては、抹茶(粉茶)やジャガイモ、煮干し、味噌などがあります。 いずれもふだんの食事で比較的よく食べるものなので、普通に食事をしていれば亜鉛が不足することはありません。 にもかかわらず、現代の日本人に亜鉛不足の傾向があるのは、私たちが想像する以上に食生活が乱れているということでしょう。 特に、亜鉛不足で糖尿病になっている患者さんは、食事制限をすることで、かえって亜鉛不足を招く危険があります。 多くの病院では、カロリーの摂り過ぎによる肥満が血糖値を上げる最大の原因として、食事を1日1200〜1500kcalに制限するよう 指導しています。その際、医師や栄養士はカロリーを抑えることを重視するあまり、食材の選択に対する配慮が欠けがちになります。 すると、亜鉛をはじめとするミネラルやビタミンの不足を招いてしまい、痩せていても糖尿病になるというわけです。

亜鉛を食品から摂ると、十二指腸で吸収され、いったん骨や肝臓に蓄えられてから、インスリンや酵素、精液などの成分として 使われます。このように亜鉛は体内で広範囲に使われるので、極端に多く(1日100mg以上)摂り過ぎなければ、 副作用を招く恐れはありません。 亜鉛の1日の必要摂取量は15mgといわれますが、厚生労働省の調査によれば、日本人の亜鉛の平均摂取量は男性が8.8mg、 女性が7.3mgにとどまっています。そこで、特に痩せているのに糖尿病の人やその予備軍の人、 運動療法や食事療法でも血糖値が下がらないという人は、最低でも1日15mgの亜鉛を摂るようにしてください。



■亜鉛不足の自己診断法

  • 味覚がわからなくなった
  • 肌荒れがひどい
  • 爪が変形したり、変色したりする
  • 抜け毛が多い
  • 擦り傷がなかなか治らない
  • よく立ちくらみがする
  • お酒に弱くなった
  • 精力が衰えた
  • 生理が来ない
  • 物忘れが激しい
  • イライラする
  • 疲れやすい
  • 風邪をひきやすい

1つでも当てはまれば亜鉛不足の可能性があります。
2つ以上は専門医に診てもらう必要があります。